流行り神

流行り神 警視庁怪異事件ファイル (通常版)
 
「友達の友達に聞いたんだけど…」
という語り出しで口伝されていくさまざまな「都市伝説」。
口裂け女」や「人面犬」など、陳腐ながら不思議なリアリティーをもつこれらの
噂は、本当にただの作り話なのでしょうか?
 
このゲームは「警視庁に密かに存在する怪事件専門の捜査課」に配属された主人公
となって、そんな「都市伝説」の中に潜む危うい真実を解き明かしていく推理アド
ベンチャーです。
 
まず、システム的な特徴として以下の3つを解説しておきましょう。
 
①カリッジ・ポイント
このゲームでは、カリッジ(勇気・度胸)ポイントというのが設定されていて、
いくつかの選択肢はこのポイントを消費しないと選べないようになっています。
これは、英雄的な行動や、一見無謀に見える行動が事件を解く鍵になることもある、
ってのを表現したかったと思うんだけど、「要カリッジ」のマークのある選択肢って、
妙に意識してしまうので何かうっとうしい感じ。
悩んだ末に、カリッジ・ポイント消費して無謀な選択肢を選んだら、ただの引っ掛け
でがっかり…ということがしばしば起こります。
 
②セルフ-クエスチョン
ストーリーの合間に自問自答を行い、推理をまとめていくモード。
これ自体は、推理アドベンチャーとしての雰囲気を盛り上げる良いシステムだと思う
けど、どうしても選択肢の制限の中で自分の思った通りの推理が組み立てられなくて、
もどかしい思いをすることも多い。
(いや、私の推理がズレてるのかもしれないけど…(笑))
せめて、組み立てた推理をキャンセルしてリトライできるようにして欲しかった。
 
③思考ロジック
一口で言うと、人物相関図を自分でエディットしながら事件を推理していくシステム。
捜査を進めるうちに、最初空白だった人物相関図のパネルに関係者の名前が追加され
ていき、それぞれの関係を示す矢印が表示されます。
この矢印の説明欄にプレイヤーが、ゲーム中入手した「殺害」とか「親子」とかの
キーワードを当てはめていく事で、事件の人間関係を把握していくわけです。
これは結構気に入りました。

キーワードの設定を間違えると、関係のない人間を犯人にしたり、ピントのずれた
推理になってしまい、その後の採点フェイズで「不可」になってしまうので、
けっこうドキドキさせられます。

厳しいことを言うと、ここでも選択肢の制限によるもどかしさを感じてしまうの
ですが、それでもゲーム進行に応じて、相関図が「出来ていく」感が新鮮で、
他のゲームでは味わえない「推理の楽しさを」感じることができました。

出来上がった相関図を見ていると、つくづく「事件」とは人間同士の「関わりあい」
から生まれてくるもんだと実感させられます。
…いや、人間の関わりから生まれるトラブルが「事件」なのかな?


さて、それではストーリーのほうですが、雰囲気はぶっちゃけ、「和風X-ファイル
というか、「X-ファイルケイゾク」という感じ。
シナリオはドラマ仕立てで、用意された複数の事件を、順にクリアしていく形式です。

タダの暗くてこわーいだけのホラーアドベンチャーではなく、適度なユーモアや
娯楽性があり、物語にぐいぐい引き込まれます。

こわもての巨漢の癖に怖がりの相棒や、関西弁を話す昼行灯の女上司。
そして、主人公を手助けしてくれる若き民俗学者と、友人の美人監察医(それぞれ
オカルトに対する主張が正反対で、X-ファイルの主人公コンビを思わせます)
などなど、登場キャラクターも非常に個性的です。

惜しまれるのは、シナリオのボリュームが少ないという点。
導入編の軽い話と完結編を合わせて、たった4話ですよ!?
(隠しシナリオは外伝なので除く)
はっきり言って、この手のドラマ形式を意識した物ならば、最低でも6話は必要
ではないでしょうか。

おそらく、マルチストーリーや思考ロジックに対応するため、膨大な分岐が必要
となり、1話ごとの開発的負担が大きくなりすぎたため、これが限界だったのだと
思いますが、キャラクターも設定も魅力的なだけにものすごく不完全燃焼な感じです。
 
個人的には、テレビドラマでもマンガでも小説でもいいから、続きの話を観てみたい
と思ってしまいました。